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《1934年式ロールスロイスファントムⅡ》カクテル「ダブルアール(WR)」(中村充宏)

またイギリスのお酒をベースにしようと考えると、ロンドンドライジンかスコッチウイスキー。作ってみるとジンだと透明なのでカクテルの色が明るくなり、ウイスキーだと少し茶色が入ることで落ち着いた色合いになり、まさにペニンシュラグリーン。

味わいについては、抹茶という味に対して新しいアプローチをしようと試みました。例えば、抹茶にミルクやチョコレートは使い古された組み合わせで、何か驚きある好相性の材料が欲しい。

いくつか試作を重ねた中、目を付けたのはパッションフルーツ。このシロップを加えることで、冷水で作る時の抹茶の爽やかさが強調され、組み合わせることで印象に残る味ができた。混ぜる事で新しい味を生み出せる事が、カクテルの魅力。そして最後にカクテルの味に深みを加えるため、イタリアのスィートヴェルモットを少量加えて完成。

カクテルの飾りも色々と候補はありましたが、ロールスロイスのボンネットにある羽ばたく女神像「スピリット・オブ・エクスタシー」のような、小さくても記憶に残る飾りを探しました。日本の印象に残る色として浮かんだのが金色。

最近では修復技術の金継ぎなども世界に認知されていると聞き、最終的には深緑のカクテルの上に金箔をのせることで目を引き付ける色の対比と日本らしさを表現しました。

味わいの流れとしては、抹茶とパッションフルーツが組み合わさった新しい味から始まり、ヴェルモットのスパイス感とウイスキーの奥行き、後味に抹茶の心地よいタンニンとレモンの清涼感が鼻腔に香ります。

抹茶に慣れ親しんだ日本人のお客様や同じバーテンダーも、斬新な味の組み合わせに驚く反応を見せ、私としては作った甲斐がありました。外国人のお客様は、抹茶を点てる時に茶碗をのぞき込んだり、日本人は毎日抹茶を飲むのか?など興味津々でした。ちなみに今回紹介したカクテル「ダブルアール(WR)」(2783円〈税サ込〉)は、Peterバーでお飲み頂けます。

また、テーマとなった1934年式ロールスロイスファントムⅡは当ホテルの正面玄関に駐車されている時は、どなたでもご覧頂けます。

次回は、日活国際会館の時からこの地を見つめるホテルの守り神、ガーゴイルにインスピレーションを受けたカクテルを紹介します。

撮影:石本卓史

ヘッドバーテンダー:中村充宏(ナカムラミツヒロ)

2011年にPeterバーでバーテンダーとしてのキャリアをスタートし、2013年より現職でバー全体を統括。2014年より国内外の大会へ積極的に出場し、数々の受賞経験を残す。2015年には「ボンベイ・サファイアワールズモストイマジネイティブバーテンダー2015」で日本最優秀賞を獲得。同年5月、ロンドンでの世界大会に出場し、ジントニック部門で優勝。受賞歴のあるカクテル、「エンドレスビューティー」と「パーフェクトエデン」はPeterバーで販売。


Peterバー

ザ・ペニンシュラ東京24階
東京都千代田区有楽町1-8-1 TEL:03-6270-2888
アクセス:東京メトロ日比谷線・千代田線「日比谷駅」A7出口
※営業日・時間はホームページなどでご確認ください。
※新型コロナウイルス感染症予防対策に基づき、通常はマスク着用にて業務を行っています。

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