臥龍の門 トッキーここにいる「トッキーマティーニ」(中村充宏)
バーに煌めくアートを呑む(第1回)
はじめまして。私はザ・ペニンシュラ東京にある「Peter(ピーター)バー」にて、バーテンダーをしております中村充宏と申します。今回から、「アートとカクテル」をテーマに、芸術作品にインスピレーションを受けて制作したカクテルを紹介していきます。
カクテルは、ワインやウイスキーと違い、着想という原点から創造し、材料やグラス、デコレーション、また味わいなどで“表現する”という特徴があり、アート作品に近いように思います。実際に制作手順も重要ですが、創造力が試されることが多いです。
例えば、以前に私が作ったカクテルに「パーフェクトエデン(完全なる楽園)」という作品があります。これは森に着想したカクテルで、材料で表現しました。
少し詳細を解説すると、生姜で木の根、ヒノキのビターズで木、アロエのリキュールで葉、柚子の皮で果実、スミレのリキュールで花、コーヒー豆の香りで土を表しました。森の構成要素をバラバラにして、一つひとつの材料に落とし込み、そして美味しいという味にまとめ上げ、作品にしました。今回の企画を通して、このようなカクテルが持つ芸術的な側面を感じていただければ嬉しいです。
初回となる今回は、ザ・ペニンシュラ東京の中にある芸術作品からインスピレーションを受けて制作したカクテルを紹介します。
ザ・ペニンシュラ東京には、約90名のアーティストによる1000点以上のアートやデザイン作品があります。その9割が日本人のアーティストによるもので、左官職人、挾土秀平氏によるフロントデスクの背景にある土壁、またザ・ペニンシュラ東京が建つ前にあった旧日活国際会館から引き継がれる《ガーゴイル》は彫刻家、黒田嘉治氏の作品。
そしてメインエントランスから入り真正面、ロビーの中心に飾られているオブジェが今回取り上げるアートです。こちらは《臥龍の門 トッキーここにいる》という現代いけばな作家の濱恵泉氏による作品。
すべて竹を使った手作りで、龍が宇宙を守っているイメージを作品にしたものです。先生曰く、「平和のシンボルとして、ここにいらっしゃるお客様を守るという意味合いもある」とのこと。
「DayArt」の編集長自らが取材・体験し、執筆しています。