写真集『Noch Mal Leben Vor Dem Tod』ウォルター・シェルス/ベアト・ラコタ
『Noch Mal Leben Vor Dem Tod』ウォルター・シェルス(Walter Schels)/ベアト・ラコタ(Beate Lakotta)/DVA/5,176円(税込)
やっと手に入った。その感慨が大きかった。
ドイツの写真家ウォルター・シェルス(Walter Schels)の写真集『Noch Mal Leben Vor Dem Tod』のことだ。簡単に翻訳すると、「死ぬ前に再び生きる」となる。
初めてシェルスの作品を観たのは、2009年に開催された森美術館の企画展「医学と芸術」でだった。「生命と愛の未来を探る」というサブタイトルが打たれたこの企画展には、文字通り医学や生命をモチーフとした芸術作品が展示されていた。
そのとき展示されたシェルスの作品は、不治の病を負った人物の死の直前・直後のポートレートだった。この「Noch Mal Leben Vor Dem Tod」シリーズ(企画展では「ライフ・ビフォア・デス」と明記されていた)は、ジャーナリストのベアト・ラコタとの共作である。
遺族の了解を経て制作された写真集には、写真とともに文章が掲載されている。
上の写真では、左側が生前、右側が死後となる。この写真を見比べたとき、思わず息を飲んでしまう。それは緊張感というよりも、生と死の狭間、その奥行きといったものに慄然としてしまうからだ。
誰しもが平等に迎える死。その直前には明らかに生がある。反対にいえば、生のすぐ後ろには死が明確に存在している。それを私たちに改めて提示している。
本書は2004年に刊行された。ドイツ語で書かれており、残念ながら日本語訳のものはない。大判サイズのハードカバーで、200ページ以上の大著だ。
ここ数年、探していたが、古書店で売られていることも稀で、今回、アマゾンで手に入れることができた(以前はアマゾンで売られていなかったと思うのだが、筆者の勘違いかもしれない)。
上記の企画展の図録でもシェルスの作品は、何点か観ることができる。こちらの方は割と古書店で手に入れやすい。ぜひ観てほしい。
「DayArt」の編集長自らが取材・体験し、執筆しています。