
「DayArt」27号特集「追悼 林聖子」
聖子さんは物事に動じない人だった。ほとんど慌てた様子を見たことがない。誰かが亡くなったときも静かに受け入れ、誰かが落ち込んでいるときも静かに見守る。そういう人だった。

写真:石本卓史
僕にとって聖子さんは祖母と変わらない年齢だった。だが、一度も「お祖母ちゃん」と感じたことはない。優しくありながらも、どこか緊張感がある。僕は、畏れのようなものを感じて接していた。おそらく聖子さんの人生経験、歩んできた道が自然と聖子さんをそのような人格に育てあげたのかもしれない。聖子さんは愚痴ひとつ言わず、人生を楽しんでいたように思う。からからと笑い、よく食べる。でも品がいい。本当に魅力的な女性だった。
そろそろ筆を置かないと。
聖子さん、お礼の言いようがありません。聖子さんの訃報を聞いてから、僕は泣けなかった。実感がないというのもあるけれど、まだ振り返りたくなかった。
今、こうして追悼文を書いています。聖子さんとの思い出をポツポツ噛み締め、ようやく涙が出ました。本当に、本当にありがとうございました。貴重な体験を数えきれないくらいさせてもらいました。
お父さん、お母さんと会えましたか。太宰さんと再会していますか。僕が逝くとき、下戸だけど太宰さんにかぶれた人がいて、よく風紋に来てたんです、と紹介してください。僕は決してでしゃばりません。黙って、聖子さんと太宰さんのお話を聞いています。
聖子さん、ありがとうございました。

「DayArt」の編集長自らが取材・体験し、執筆しています。