「DayArt」28号特集 ペット探偵・遠山敦子さん(ペットレスキュー)に聞く
今回、ノワは無事に見つかったのだが、捜索中、とにかく遠山さんの存在はとても大きかった。近所の家を訪問し、テキパキと動く姿を見て、妻も僕も勇気と元気をもらった。必ず見つかる、という予感もあった。遠山さんからは信頼さと誠実さを感じることができた。
■「逃げない」という先入観は危険
猫を含め、ペットが脱走しないためには、どういう対策が必要なのだろうか。捜索する立場である遠山さんは、やはり先入観を持たないことが大事だという。
「私もプライベートでいろいろなペットを飼っていますし、猫もいます。この仕事に就く前、私も脱走対策を疎かにしていました。うちの子は大丈夫だ、と。今は二重玄関にしたり網戸ストッパーをつけて対策しています。脱走してしまった方の中には、『いつもは玄関前で待っていてくれたんです』という方もいます。いろいろな経験を目の当たりにすると、どのペットに対しても基本的な脱走対策は必要だと思います」
体験者だからよくわかる。100のうち1回でも異例のことが起きたら、猫は脱走してしまう。その1回を起こさないための対策は、本当に必要だ。脱走して見つかるなら、まだいい。でも見つからないことだってある。見つからないということは、一生涯会えないということだ。
「うちの子は大丈夫、ということはよく聞きます。でも、その思い込みは控えた方がいいと思います」
なお、ペットレスキューでは全国、北は北海道、南は沖縄まで依頼を受けている。基本料金があり、別途交通費などはかかってくる。まずはメールや電話で相談していただくといいだろう。ペットレスキューは藤原さんや遠山さんを含め、現在は3名が在籍。特に指名制というわけではないのでご留意を。
相手は動物なので、どれくらいで見つかるかはわからない。スケジュールなどはしっかり調整してくれるので、少しでも依頼したいという気持ちがあれば連絡するのが先決だ。
「よく体がきつくないですか、と聞かれるんです。でも藤原さんはそういうケアもしっかりしてくれて、休みがほしい、と言えば、ちゃんと休ませてくれます。藤原さんたちと比べ、私は若いですけど、体は大事ですから。私は一件ずつ解決していくタイプです。そのやり方も尊重していただいています」
もちろん、ペットが逃げなければ、それに越したことはない。だが、いくら警戒していても、ひょんなことでペットは逃げてしまう。それはやむないことだ。その場合、あまり自分を責めることはせず、ペット探偵にすがってみるのも、心身のバランスを保つ上でも重要かもしれない。経験者は語る。とにかく捜索には体力が必要だ。睡眠と食事、これを欠いたら、ペット捜索どころではない。動きたくとも動けないからだ。
ペット探偵という仕事は、就きたくともそう簡単に就けるものではない。いくら動物が好きだからといっても、向かないこともあるだろう。そういう意味でも、遠山さんはペット探偵を天職のように捉えている。この先も健康に気をつけながらも、ペットが脱走し悩んでいる方を一人でも救ってほしい。
遠山敦子(とおやま・あつこ)…1996年大阪府生まれ。13歳から16歳の時に動物しか遊び相手のいないような九州地方の離島で過ごし、根っからの動物好きに。また18歳の頃に訪れた動物愛護センターに収容された動物たちを見て衝撃を受け将来役立てるような活動を行うと誓う。一時期ペットショップでアルバイトをしたのち、2020年、TBS「情熱大陸」で紹介された藤原博史の迷子猫捜索に衝撃を受け転身。女性ならではの細やかな感性を活かし、飼い主さんの不安に寄り添いながら、迷子になった動物の視点で現場をつぶさに探索し数々のペットを発見・捕獲している。
ペットレスキュー |
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「DayArt」の編集長自らが取材・体験し、執筆しています。