『ギター・ブギー・シャッフル』著 イ・ジン 訳 岡裕美
『ギター・ブギー・シャッフル』著 イ・ジン 訳 岡裕美/新泉社/2,200円(税別)
韓国ドラマの人気は、もはや定着したといえる。そして、昨今は韓国の現代文学も人気となっている。
本作は主人公「ヒョン」の一人称で描かれている音楽青春文学。とはいえ、舞台は朝鮮戦争後の韓国のため、なかなか日本人には馴染みがないかもしれない。しかし、瑞々しいヒョンの語りが、時には韓国の近代の歴史、ソウルの街並みを紹介してくれるので、読者を置き去りにすることはない。
ヒョンは貧しい生活を送る中、唯一音楽を聴くことが楽しみであった。音楽茶房に出入りし、そこで音楽を満喫していた。たとえ空腹であろうと、そこに通うためにお金を節約する。
独立の日は突然やってきた。気配も予告もなく、不意に。まるで革命のように。
ある日、音楽茶房で、ヒョンが働いていた工場の同僚だったウギと出会う。ウギはPX(米軍の売店)で働いており、米軍専用クラブでバンドの手伝いをしているという。ウギはヒョンを誘い、それにより、ヒョンは「革命」を迎えることになる…。
最大の魅力はヒョンが、バンドにギタリストとして参加し、活躍していくという躍動感と臨場感だろう。なかでもボーカルの「キキ」という女性が愛らしい。彼女の虜になってしまうこと間違いなし!
なお、著者のイ・ジンは本作で第5回秀林文学賞を受賞している。大変読みやすい翻訳であることも付け加えておこう。
「DayArt」の編集長自らが取材・体験し、執筆しています。