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ギンズバーグ判事を悼む壁画 ニューヨークに誕生!

執筆・写真:笹野大輔

ニューヨーク・アートの今と未来(第2回)

女性にできない仕事とはなにかと問われ、少しでも返答に窮したらアメリカでは「間違い」ということになる。答えは「なにもない」なのだから。

しかし、こうした女性蔑視か否かについて「なにが間違った会話か」を知ろうとするだけでは、明治時代に鹿鳴館で西洋人の前で踊っている姿と変わりはない。セクハラのように、言ってはいけない言葉や単語を覚えて“言わないようにする”ことが男女平等の本質ではないからだ。

昨年、アメリカの最高裁判所の判事の1人であるルース・ベイダー・ギンズバーグ氏が87歳で亡くなった。彼女の死は、新型コロナのニュースで溢れる中においても全米メディアで大きく扱われた。ギンズバーグ判事は、アメリカにおいて女性の権利向上のために多くの功績を残した人物。彼女がアメリカ社会に与えた影響は、世界各国のリベラル派にも伝播した。

新しく完成したギンズバーグ判事をモチーフにしたこの壁画は、イーストビレッジの1stアベニューにある。そしてギンズバーグ判事は、ニューヨーク・ブルックリン生まれ。死後、彼女が壁画になってニューヨークの街に舞い戻ってきたことを地元メディアは好意的に取り上げた。

アメリカの制度上、ギンズバーグ判事は生涯現役の判事だったが、最期まで信念はぶれなかった。人物としては女性の権利を声高に叫ぶ、というよりも、男女平等について人の琴線に触れる言葉を用いた。また、なにより茶目っ気のあるチャーミングな女性だった。母親には「淑女であれ、自立した人間であれ」と言われ育てられたという。

壁画を描いたアーティストは、カリフォルニア生まれのエリー。ギンズバーグ判事が若い頃に思い描いていた未来を象徴するかのように、女性であるエリーが高所でクレーンに乗り、壁にスプレーを吹き、ペンキの飛沫を受けながら完成させた。

エリーはギンズバーグ判事について「(彼女は)しとやかに、静かに、そして激しく男女平等について戦いました。そうすることでアメリカでの女性の権利や機会の均等を得るための道が開かれました」とインスタグラム(ellestreetart)に投稿している。

そしてこのギンズバーグ判事の壁画(2020年11月完成)は、くしくもマイケル・ジャクソンの壁画(2018年7月完成)と隣り合わせになった。マイケル・ジャクソンの壁画は、彼の幼少期と成人期の顔が半分ずつ描かれている。この場所に2人が並んでいる様は、まるでギンズバーグ判事が「男性でも女性でも白人でも黒人でも、人間を外見や肌の色で判断することがいかに間違っているかわかるでしょう」と訴えかけているかのようだ。

ニューヨークは全米からも訪れる人が多い街。この壁画によって、街歩きの最中、人種差別と戦ったマイケル・ジャクソンと、女性の権利向上のため戦ったギンズバーグ判事が同時にストリートに現れる場所になった。保守とリベラルで分かれるアメリカ人にとって、新たなアートスポットになるだろう。

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