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「DayArt」28号特集「三毛猫ノワ脱走の6日間」ロングバージョン

ノワが逃げたと思われる家の前の道路。奥の細い道を抜けると大きな通りに出てしまう。そちらの方に行ってしまうと、かなり絶望的と思われた。
上の写真の小さい道を抜けた先に、この広い通りがある。右側の方に行くと、家から半径100メートルくらいとなる。

1人目の猫探偵に依頼する

妻が涙を流しながら、道を行き交う。近所の人も異変に気づき始めた。

僕は、焦りを感じながらも、何とかしないといけないと思った。まず近所に住む友人の桐谷君に来てもらい、引っ越し業者を伴って妻とともに新居に行ってくれないかと頼んだ。彼はすぐに来てくれた。

次に僕は、猫探偵のことを思い出した。数年前、NHKで「猫探偵の事件簿」というドラマが放映されていたのを妻と観ていた。それはペットレスキューの藤原博史さん(本名)をモデルとしていた。

すぐに電話するもつながらない。他の猫探偵業者にかけたら、折り返しの電話をくれた。西本さんという方だった。西本さんはその日の夜7時頃から行けるという。西本さんに依頼することにした。しばらくして藤原さんは折り返してくれた。このまま見つからなかったら、またお電話しますと伝えた。

僕はご近所さんを回った。猫が逃げてしまったので見かけたら連絡ください、と。皆親切に対応してくれた。管理会社にも連絡し、オートロックの門を開放したままにする許可をもらった。ノワが帰ってくるかもしれないからだ。幸い契約は2月5日まで残してある。この約10日でノワを見つけないとならない。

僕はひたすら歩いた。引っ越し作業が済んでから妻はトンボ帰りし、役所などに連絡を入れ、ひたすらノワを捜した。野良猫さえ見かけない。冬の夜は訪れが早い。次第に暗くなる。

西本さんが来てくれ、ノワの性格や状況を説明した。チラシを作り、SNSを駆使した。連絡した保護主さんの八坂さんが、ボランティアの方を連れてやって来てくれた。捕獲器を数器借り、使い方を教わり適当なところに配置した。西本さんは朝まで捕獲器を張りながら、夜を徹してくれた。

借りた捕獲器。使い方を教わり、家の近所の方に承諾を得て設置させてもらった。

翌日から、チラシ配布と近所のノワ捜索が本格化した。あまり遠くまで行っていないだろうということで、近所の茂みや更地、許可を取って個人宅を見させてもらった。何の手がかりもない。ひたすら歩き続けた。

猫を飼っている友人の太田夫妻は、仕事終わりに来てくれた。僕の高校時代の友人・仲田君も来てくれた。ツイッターでノワらしき猫を見たという報告があった。だが場所は笹塚。片道7キロ近い。時間は深夜12時だ。

「車出すから行くだけ行ってみようよ」

仲田君が言ってくれ、シェアカーを借り笹塚へ向かった。駅近くの茂みを捜すも猫はいない。コンビニの店員さんに聞くと、確かに数日猫の鳴き声はするという。小一時間捜したがいなかった(後日、情報提供してくれた方が写真を撮って送ってくれたがノワではなかった)。

笹塚駅の周辺。この茂みに猫がいると思われたが、見つからなかった。

帰ってから仮眠し早朝、仲田君は捜索に付き合ってくれた。仲田夫妻も猫を飼っている。飼い始めてすぐに猫は大病を患った。彼らは懸命に治療方法を探し奇跡的に回復した。そういう経緯もあって、彼らは我ごとのように心配してくれた。

太田夫妻にせよ仲田君にせよ、僕らにとって来てくれるだけで心強かった。とにかく捜索は心身ともにやられてしまう。僕は捜索の期間、約150キロ歩いた。膝と腰がボロボロになった。妻と二人でとにかく食べようと、夜にスーパーで惣菜などを買って食べた。

妻はずっと泣き通しだった。僕らは互いを責めることだけはしなかった。

「ノワちゃん、私たちが喧嘩してたとき、いなくなったでしょ。自分がいなくなれば二人は仲良くなると思って出ていっちゃたのかもしれない」

妻はそんなことを言った。

「寒いだろうにお腹空いてるだろうに。それが可哀想で……」

僕は捜査の間、心が折れることはなかった。意地でも見つけてやる。何の保証もないが固く信じていた。

しかし、西本さんの協力も実らなかった。西本さんは、少し遠くに行った可能性もあると言った。いよいよペットレスキューの藤原さんに再度連絡し、翌日から遠山敦子さん(本名)が来てくれることになった。ノワがいなくなり4日が過ぎていた。

わずか10メートルの距離に!

遠山さんについては、ご本人のインタビュー(後日アップします)を参照してほしい。遠山さんは到着するなり、活発的に動いた。これまで行っていない近所に回り、捜索やカメラとエサ設置の協力を求めた。快く皆さん引き受けてくれた。全部で6箇所。

妻は遠山さんの行動力に目を見張り、「とても勇気づけられた」と言っていた。

翌日、遠山さんは昼過ぎにやってきた。昨日置いたカメラを回収し、一緒に見ていく。白井さんという大きな平家のお宅で回収したカメラも、その場で再生した。

「あ、エサ食べてます!」遠山さんの声が弾んだ。

「え!」覗き込むと、モノクロ画像に猫が映っている。白井さんも見ると、呟いた。

「ああ、これはうちの猫ですね」白井さんのお宅も猫を飼っていたのだ。落胆し早送りで見ていくと、遠山さんの手が止まった。

「これ、別の猫ちゃんじゃないですか。ほら」

僕はまじまじ見た。足にストライプの模様がある。ノワかもしれない。

「正面ありませんか」

遠山さんがコマ送り再生をする。

間違いなくノワだった。他の映像では、ノワの特徴的な脚のストライプ柄と丸っこい尻尾が確認された。

「ノワちゃんだ!」妻が叫んだ。モノクロでも確かにノワだとわかった。

「ああ、よかった」

とにかくノワが白井さん宅にいたことはわかった。僕らの部屋から直線距離にして10メートルくらいだ。

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