時代の寵児・Kawsの彫刻作品がロックフェラーセンター前に登場!
執筆・写真:笹野大輔
ニューヨーク・アートの今と未来(第15回)
ロックフェラーセンター前に、5メートルを超える彫刻作品が設置された。目が「××」のキャラクター名はコンパニオン。制作は日本のアニメ文化にも影響されたブライアン・ドネリー氏によるもの。日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、彼はKawsの名で世界的に有名な現代アーティストだ。
Kawsの説明は難しい。今回の彫刻にしても「大きな彫刻名が《COMPANION(仲間)》、小さな彫刻名が《BFF(永遠の友達)》、2つの作品が一つになったもので作品名は《シェア》」とプレスリリースで発表されている程度。Kaws自身も、基本的に作品の意味を問われても「コミュニケーション」や「対話」としか答えない。
今回の2つの彫刻(コンパニオンとピンク色のセサミストリートのエルモ)は、キャラクターとして2018年にもユニクロでコラボしている。なお、Kawsはユニクロとだけではなく、ナイキやヴィトン、ディオールなどとコラボをしているので、ファッション業界とのコラボは珍しくはない。
Kawsとよく比較されるのが、アンディ・ウォーホルだ。Kawsはフィギュアのようなトイ(おもちゃ)とアートを融合させることにより、トイ・アートという分野を確立させた。両者が共通している点は、商業とアートの境を曖昧にさせていること。そこにKawsは、人々にコンパニオンを所有させ、人とのコミュニケーションや対話を求めている。
日本でKawsのコンパニオンがあまり有名にならない理由は、目が「××」と表現されていることではないだろうか。日本では普段から「あの人の目が良い」「目を見て話したい」「目を見ればわかる」などと、目からなにか意味を読み取ろうとする。
ところがニューヨークなど多民族都市では、行動や発言、服飾や所作で評価されることはあっても「目」が決め手になることはない。例えば、目がキリリとした人から謝罪されたとして「それが本心かどうかなんて誰がわかるの?」となる。ニューヨーク在住のKawsは、目で判断されることを拒否しているのかもしれない。
「××」目をしたKawsの作品と人の距離感は、インスタグラムと似ている。近すぎず、遠すぎず、心地よく距離を保つ。それでいて心の内に所有することもできるようになっている。Kawsがコンパニオンに喜怒哀楽を表現しても、背景にストーリーがないので静かなコミュニケーションを生むのだろう。Kawsは時代の寵児に違いない。
ジャーナリスト、ニューヨーク在住。その他ビジネスに携わる。NOBORDER NY支局長、現代ビジネス他