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ニューヨークの刹那的なアート「ボディペインティング」

執筆・写真:笹野大輔

ニューヨーク・アートの今と未来(第12回)

8月下旬の日曜日のタイムズスクエアで、裸体の男女によるボディペインティングが行われていた。真っ昼間ではあるが、アーティストのアンディ・ゴラブ氏(クルマの屋根のステージ上の男性)による、アートイベントの参加者たちだ。

アンディ・ゴラブ氏は、2007年からニューヨーク各地の公共の場でボディペインティングを始めた。もちろんモデルたちは全裸。アンディ・ゴラブ氏はイベント開催によって、2011年に一度逮捕されたが、無罪を勝ち取った。その後「公共の場での裸は『夜間は良いが昼間はダメ』」と付けられた条件も、2013年ニューヨークの人権団体の協力によって取り除かれた。

いまでは裸のモデル50~100人が集まる「NYCボディペインティングデー」が毎年開催され、2021年で8回目を終えた。その他のタイムズスクエアやユニオンスクエアで開催される単発イベントは、小さな告知をするだけでゲリラ的に行われる。今回は警官が集まる派出所前で行われた。

なぜ公共の場なのか。流れとしては、1992年に女優デミ・ムーアが、裸のボディペインティング姿をスタジオで撮り、ファッション誌の表紙を飾った。アメリカの有名スポーツ雑誌社もそれに続いて、水着に模したボディペインティング姿が表紙の雑誌を毎年発行するようになった。

どちらもヌードのような性的意味合いを消すことには成功している。だが、ライブではない。ライブでも閉ざされた空間であればストリップ的になってしまう。アートとしてのボディペインティングに必要なのは、より開かれた場でのライブ感なのだろう。

アンディ・ゴラブ氏はニューズウィークでのインタビューで「音楽だと時間は大切になります。一方、アートには時間の要素はないかのようです。瞬間が大切であり、アートを見ている経験も大切です」と答えている。ストリートでの即興ジャズに近い。一回性を意識していて、刹那的でもある。

ボディペインティングのイベントへは、モデルが自主的に参加を申し出ている。なかには、乳がんで塞ぎがちだった自分へのセラピーとして利用する女性もいた。その女性は作品の制作過程を公開したYouTube上で、自分の体を指さし「わたしは濃淡ある1つのカラーではないんです。ピンク、ブルー、ホワイト、オレンジ…これらはわたしの感情や気持ち、エネルギーです」と笑顔を見せる。本来、人間は多彩だ。自分を律することで単色になっていくのだろう。彼らはただ露出の趣味がある、というわけではない。

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